関東新人戦の2日目は、準決勝2試合と決勝を行い閉幕。準決勝の第1試合は、22年ぶり3回目出場の栃木・阿久津スポーツが、7年ぶり6回目の優勝を期す茨城・茎崎ファイターズに完勝した。1回戦同様に大技小技で序盤からリードを広げ、エース右腕がゲームをつくって逃げ切った。1回戦でV候補の千葉・豊上ジュニアーズを下していた茎崎は、序盤の守りのミスが尾を引いてしまった形に。指揮官は来年に向けてチームの立て直しを口にしている。
※記録は編集部、学年未表記は5年生
(取材&文=大久保克哉)
■準決勝/第1試合
阿久津が攻守でリード、茎崎の追撃かわす
◇11月24日 ◇茨城・水戸
阿久津スポーツ(栃木)
301200=6
000003=3
茎崎ファイターズ(茨城)
【阿】栗林、二ノ宮-丸山
【茎】山﨑、石塚-佐々木
二塁打/湯浅(阿)、柿沼、本田(茎)
【評】終わってみれば毎回安打の阿久津が、守りでも相手を上回って完勝した。四球や敵失絡みで開始から6球で先制すると、四番・湯浅朝陽が逆方向への適時打で2対0に。なお一死満塁からのスクイズバントは投前に転がって三走は本塁封殺も、2-3-2と転送(失策)の間に二走・湯浅が生還した。茎崎は2回裏、四球や敵失などで一死二、三塁としてスクイズも、これが飛球となって併殺で無得点に。波に乗る阿久津は3回、湯浅と川尻一太主将の連打で無死一、三塁に。ここで二盗は阻まれるも、直後に六番・森田哲大がスクイズ(野選)を決めて4点目。4回は川尻の中前2点タイムリーで6対0とした。6回裏、茎崎は3四死球と渡部竜矢主将の一ゴロでようやく1点を返す。さらに代打・本田大輝の左越え二塁打で2点を加えたが、反撃もここまでだった。
●茎崎ファイターズ・吉田祐司監督「初回にバタバタして(3失点)、リズムに乗れなかったのがすべてですね。あれだけリズムが狂うと、なかなか難しいし、バッティングに頼っているとこんなゲームになってしまう。冬場はもう一度、全員がゼロからスタート。レギュラーも何もなく、フラットな状態から競争してもらいます。チームとしては経験値がまだまだなので、上で戦えるように経験も積んでいきたいと思います」
第3位
[茨城]茎崎ファイターズ
1回表、阿久津は一死一塁から二番・平山皓哉(4年)の犠打(上)が敵失を誘って先制。茎崎は吉田監督がタイムを取る(下)
1回表、2点を先取した阿久津はなお、一死満塁から二ノ宮直之がスクイズ(上)。低めの球にヒザを追って対応したバントは投前に転がり、三走は本塁封殺も、一塁転送の間に二走・湯浅が生還(下)
3点を追う茎崎は2回裏、四球と敵失に百村優貴(4年)の犠打(上)で一死二、三塁とする。そしてスクイズ敢行も、阿久津の右腕・栗林海斗の好フィールディングで投直併殺に(下)
ピンチを脱した阿久津は直後の3回表、四番・湯浅が左中間二塁打(上)を放つと、五番・川尻主将が左前打(下)で続く。二盗失敗で一死三塁となるも、六番・森田がスクイズを決めて4対0に
4回表、阿久津は先頭の九番・岡田大翔(4年)の内野安打(上)から二死満塁と攻め立て、川尻の中前打(下)で2人がホームイン
打線が沈黙していた茎崎は4回に百村がチーム初安打(上)、5回には代打・柿沼京佑が右中間へ二塁打を放つも、ともに得点ならず
大会最多の5回の優勝を誇る茎崎が最終回に意地を見せる。3四球と内野ゴロで1点、さらに代打・本田の左越え二塁打(上)で計3点を返した
―Pickup Hero―
2試合8イニング無失点。クレバーなエース右腕
くりばやし・かいと栗林海斗
[阿久津5年/投手兼遊撃手]
前日の1回戦と同じく、準決勝も先発して4回無失点の好投で流れを呼び込み、決勝進出の立役者になった。
「関東大会は、県外のやったことないチームが相手で不安だったんですけど、よくやれたと思います。自分は球速はあまり出ないんですけど、コントロールを重視すれば、打撃の強いチームでも抑えられるということが分かりました」
今大会での最速は92㎞。2試合で打者30人に対して奪三振は2と、圧倒するまでの球威はない。それでも、長身から素直に投げ下ろす速球には角度がある。マスクを被る丸山智暉との息の合った配球で、70㎞台の遅球も使いながら打者の内外を攻め、凡打の山を築いていった。
ノーステップ打法の一番打者。大会3試合で無安打も、4四球で3得点。外野へ鋭い打球も飛ばした
ピンチでの粘り強い投球は出色だった。1回戦は無四球。連投となった準決勝はボール球先行で3四球も、苦しい場面で制球が冴えた。2回にはバックのミスもあって一死二、三塁とされたが、併殺(スクイズ失敗)で切り抜ける。4回は連続四球とヒットで二死満塁とされたが、あと1本を許さなかった。
「守備のエラーは絶対にあるものなので、いつも切り替えるように。自分はそういう場面も経験していてピッチャーの気持ちも分かるので、ショートを守っているときにもそういう声掛けを重視してやっていきたいなと思います」
既定の70球を投げて終わりではない。いつでも冷静で、役目を自らも考えて動ける背番号1は、勝負強いチームのひとつの象徴のようだった。